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いちばん年長だったラブラドールのレオンが死んでから、ちょうど2年が経った。
写真は今から6年前のものだが、この頃、家には4頭の犬たちがいた。 黒いラブラドールのレオン、その息子のゾロ、僕が膝に抱いているのはまだ幼かった安吾、その母親で捨て犬だったママ(安吾のお母さんだから、うちではママと呼んでいた)。 ママはこの写真を撮った後しばらくして、ふっと家を出て、それ以降、姿を見せなくなってしまった。レオンは2年前に老衰で死に、そして、息子のゾロは最近、介護が必要になってきた。考えてみれば、彼はもう父親だったレオンが死んだ年齢を超えてしまっているのだ。足腰はすっかり弱り、立ち上がるのに苦労するようになった。 犬の寿命のことを考えれば、彼らの生は、僕たち人間の7倍ほどのスピードで過ぎ去ってゆく。 彼らの1週間は、僕たちのほぼ2ヶ月に相当し、彼らの1年は僕たちの7年くらいに相当するわけだ。息子のゾロの老化の進行は、だから、驚くほど早い。先週普通にできたことが、今週には難しくなっている。 彼があとどれくらい生きられるか、僕たち夫婦にはさっぱりわからない。しかし、ひとつだけはっきりしていることは、彼がいま、とても大切な時間を過ごしているということだ。これは、彼の人生(というか犬生)の最後の季節かも知れない。 この最後の季節に、彼はこれまでずっと僕たち夫婦から大切にされてきたこと、そして何も悲しむことはないし、すべてはこれで大丈夫なのだと、僕たちは彼にしっかりと伝えなければならない。うまく立ち上がれなくて、おしっこすらちゃんとできないという、彼にとってはとても不可解な現実を、僕たちは「それでも大丈夫なのだ」と伝えてあげなければならない。おまえの生命の時間をいま、めまぐるしく過ぎ去ろうとしているけれど、それでも、すべては大丈夫なのだと。 レオンのことは、先日も書いた(『レオンのこと』というタイトルで)が、ちょうど命日がめぐってきたので、また少しだけ書き足しておこうと思う。 レオンが死んで、僕たち夫婦は庭にレオンを埋葬した。 たくさんの花で包んだレオンの首には、彼がお散歩の時にずっと付けていた首輪をかけた。 彼を土の底に横たえた時、僕たちは彼と一緒に埋葬するものを考えてみたが、結局、その首輪しか思いつかなかったのだ。 考えてみれば、その首輪は彼が所有していたただひとつのものだった。 他には何ひとつ、たったひとつすら、彼は持たなかった。そして、そのたったひとつの首輪さえ、僕たち夫婦が勝手に与えたもので、彼が自ら欲しがったものではなかった。 彼は、何も持たずにこの世に生まれ、何も持たずに死んでいった。 もちろん、それはレオンに限った話なんかではない。すべての犬がそうだし、もっといえば、僕たち人間も同じだ。僕たちは、何も持たずに生まれ、そして、何も持たずに死んでゆく。たとえ、どれほどの財をなしても、どれほどのお金を儲けても、すべてはただ、泡のように消えてゆく。死は、その一切を拒絶する。僕たちは、ただ裸のまま、ただ生まれた時と同じように、死んでゆくのだ。 僕たちは、庭に掘った穴の底に、レオンを寝かせた。そして、花を飾り、土をかぶせた。 さようなら、レオン。僕は思った。さようなら。 おまえの体は、土のなかでやがて姿を失い、土に還っていく。その首輪すら、やがて土に還り、あとはただ留め金の金属だけが、ささやかな名残として形をとどめるのだ。ひっそりと、ひそやかに、土のなかで。 死が、ただ死のみが、教えてくれることがある。 死は眩い逆光のように、僕たちの生を照らし出す。レオンは何も持たずに死んでいったが、果たして僕たちは何かをほんとうに所有したことなどあったのだろうか。 僕たちは土地を買い、家を建てる。服を買い、ペットを買う。しかし、それらは、ほんとうに僕たちのものなのだろうか。お金を支払った代償に何かを得るとき、それらは、ほんとうにあなたに属するのだろうか。 土地は、大地は、ほんとうに売り買いできるものなのだろうか。あなたが買ったペットの命は、あなたのものなのだろうか。 春が来て、初夏を迎え、僕たちの庭には、たくさんの鳥たちがやって来る。 植物は新しい芽を芽吹き、木々は花を咲かせている。僕たちの庭は、しかしほんとうは誰のものでもない、広大な大地のかけらである。 美しいひとかけら。レオン。 聴こえるか。あの鳥たちの歌が。 わかるか。麦が、風に鳴っているのが。 おまえの背中にも、その風は流れているか。 レオン。 あれから2年が経った。 おまえはこの庭に眠り、まどろみ、 そして、僕に呼びかけている。 今でも。
by rhyme_naaga
| 2012-07-03 15:22
| Naaga`s Voice
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