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数年ぶりに、八ヶ岳で焚き火ライブを行なうことになりました。
今回は、7月と9月の2回を予定しています。 第1回は、7月27日(金)〜28日(土)。 八ヶ岳での久しぶりの焚き火ライブなので、八ヶ岳の縄文の神々についてのお話しをライブの後にしたいと考えています。 ![]() 僕自身のことでいえば、神話の世界に興味を覚えたのは今から20年ほど以前のことでした。 それ以降、色々な場所や聖地へ旅をしたり、神話に関する書籍を読み続けてきましたが、じつは(奇妙に聞こえるかも知れませんが)、他の人たちがこうしたことに興味を抱くとは考えてもみないことでした。 ですから、僕自身から率先して神話について語る、という機会はこれまでほとんどありませんでした。 しかし、すべてが変わったように感じたのは、やはり3・11以降です。 僕は、以前このブログに書いたように、自身の無意識にある神話的思考・感受性を、あの危機低状況のなかで強く感じました。 おそらくあの時が、ターニングポイントだったのだと思います。僕はあれ以降、神話について人前に語るようになりました。すると、驚いたことに、聞いてくださった人たちはとても面白がってくださいました。 まるで乾いたスポンジが、水をたっぷりと吸い込むように、神話が彼らの中へ浸透していくのがとてもよくわかりました。そんな様子を見ながら、僕はひとつのことに思い至りました。 それは、「神話が無意識のなかで眠っていたのは、僕ひとりだけではなかった」というシンプルな事実です。 おそらく、とてもたくさんの人々の無意識の中には、いまだに神話が存在していて、それがいま、僕と同じように目覚めようとしているのだ、と思いました。 眠っているドラゴンが、顔をもたげるように。 だから、僕は語ろうと思ったのです。これまでたくさんの旅をしながら僕自身の内側にリザーブしてきた多くの神話と、それらをめぐる無意識の冒険を。僕たちの内なる太古と、大地を。 詳細を以下に記しましたので、ちょっと長いですが、どうかお読みください。 皆さまと八ヶ岳でお会いできることを願っています。 ******* われらの大地、われらの神話 〜焚き火ライブ&神話をめぐるトーク in 八ヶ岳 全2回 神話は呼びかける 一万年の遠くから わたしたちの無意識の水底に眠る ひとりのドラゴンに 神話は大地への回帰 神話は失われた絆への道 呼び覚そうではないか あなたたちに眠る太古の神々と その美しいドラゴンを 神話の力によって ******* 日程/テーマ: ○第1回 7月27日(金)〜28日(土)『大地の神話と縄文の神々〜八ヶ岳を中心に』 ○第2回 9月8日(土)〜9日(日)『大地への回帰』 出演:長屋和哉 ライブ:19:00〜20:30 神話をめぐるトーク:20:30〜22:00 音のワークショップ:2日目10:00〜11:30(希望者のみ) ※雨天の場合は、コンサートホール内での開催となります。 参加費: ○13,500円(宿泊、2食、焚き火ライブ&トーク参加費込み) ○4,500円(焚き火ライブ&トーク参加費のみ) ○2,000円(2日目ワークショップ参加費。希望者のみ) 定員:21名(宿泊付き)。なお、焚き火ライブ&トークのみの参加は+20名。 予約/問合せ: info@ame-ambient.com(担当:夏目恵まで) http://www.facebook.com/kazuya.nagaya(長屋和哉) 0551-47-6710(アメアンビエント) 主催:アメアンビエント ※宿泊付きの定員は21名様と限りがありますので、なるべくお早めにお問合せくださいませ。 ※お子様連れの方は、別途ご相談ください。 音のワークショップについて: ○テーマ「耳をひらく、心をひらく」 参加者全員で、音楽を奏でます。 長屋和哉がライブやレコーディングで使っているおりんやシンギングボウルなどを皆さんに使っていただき、車座になって演奏します。 演奏はとても簡単なので、どなたでもできます。「音楽は苦手だから」という方でもまったく問題ありません。ただし、このワークショップのテーマは上手に演奏することではありません。むしろ、「聴く」ことのほうに主眼が置かれています。 このワークショップでは、日常の私たちがいかに耳を閉ざしながら生活を送っているかを知り、そしてその耳を再びひらくことを試みます。また、耳をひらくことによって、私たちの心もひらきます。 そして、世界のあらゆるものたちとの交響を始めます。 会場/宿泊:八ヶ岳南麓 ペンション悠遊塾ふぁみりぃ ○お部屋はすべて洋室で、2人部屋もしくは3人部屋となります。カップルやご家族以外の方は、男女別のお部屋となります。また、お一人でお申し込みの方は性別にて相部屋となります。 ○夕食は18:00〜。朝食は8:00〜。地元の元気な野菜、中村農園の卵や鶏肉、ふぁみりぃ農園での採れたて野菜も食卓に登場します。ていねいな家庭料理でおもてなしいたします。 ○海抜1,100mに位置するカラ松林に囲まれた静かな宿泊施設です。八ヶ岳での滞在をゆっくりとお過ごしいただけます。 ○ペンションにはお風呂はありますが、徒歩10分のところには温泉もあります。 電話:0551-38-3191 HP:http://www.kan-r-npo.jp/family/ 住所:山梨県北杜市大泉町西井出7224-3 ○お車の方:中央高速「長坂IC」から15分。東京方面から約2時間。 ○電車の方:JR小海線「甲斐大泉」駅下車。徒歩10分。 前売チケットお申し込み方法: ○銀行振込をご利用する場合 銀行振込をご希望の方は、メールにてその旨をお伝えください。こちらから、銀行口座等の必要事項をご返信いたします。 メールアドレスは、 info@ame-ambient.com(担当:夏目恵まで) または、 http://www.facebook.com/kazuya.nagaya(長屋和哉) にメールください。 便利なインターネット経由でのお振込も可能です。 ○郵便振替をご利用する場合 郵便振替用紙(郵便局備え付けの青の用紙/送金料70円がかかります)に、住所・氏名・電話番号、メールアドレスを明記の上、通信欄にご希望のチケット枚数と、「焚き火ライブ&神話をめぐるトーク 第○回」とご記入くださいませ。 チケット料金は、上記の「参加費」をご覧ください。 口座番号:00220-8-132138 口座名:ame-ambient 郵便振替用紙の控えを会場にお持ちくださいませ。それを持ちまして、チケットとさせていただきます。 またお振込は、確認作業に日数がかかりますため、それぞれの日程の1週間前までにお願いいたします。 期日を過ぎてしまった場合は、改めてメールかお電話にてお問合せください。 また、ゆうちょ銀行の総合口座か振替口座をお持ちの方は、電信振替もできます。 注!) ご連絡をこちらから差し上げる場合があります。 その際、お客様のメールソフトの設定の関係で、こちらからのメールが迷惑メールボックスに入ってしまう可能性があります。こちらからのメールの発信アドレスは、info@ame-ambient.comになりますが、あらかじめ迷惑メールボックスに入ってしまわないように、お客様のほうでご注意くださいますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。 ○キャンセルについて イベント当日の10日前までのキャンセルは、無料です。 それ以降のキャンセルにつきましては、ご購入いただいたチケット料金の全額が、キャンセル料となります。ご理解の程、何卒よろしくお願い申し上げます。 ******* 3・11の東日本大震災とそれに続く福島原発の事故は、わたしたちの暮らしとそれまでの価値観を大きく変えてしまいました。 わたしたちは、当たり前のように存在していると感じていた大地や空気や水が、ほんとうは現代文明との危ういバランスのもとで保たれていることに気がつきました。 大地とわたしたちの絆。風と、海と、わたしたちの絆。 しかし神話は、わたしたちがとうに失ってしまったと思っていたそれらの絆を、いまでもその胸に宿しています。 神話は、ずっと昔に空想された単なる絵空事ではありません。それは深くて力に満ちた根を持ち、わたしたちの心という大地に枝を広げています。 わたしたちは神話の多くをどこかへ失ってしまいましたが、神話は今でもわたしたちとともにあります。わたしたちが大地との関係をふたたび取り戻そうとする時、神話が手を差し伸べるのです。 大地への回帰。 今こそ、神話の声をわたしたちに呼び戻そうではありませんか。 そして、新しい明日へ、洗い立ての明日へ、この懐かしい大地を踏み出そうではありませんか。 古い価値観はすでに壊れてしまいました。それでもわたしたちは、歩いていくのです。 あなたのなかに眠る美しいドラゴンが、すべての道を知っているから。 ******* ![]()
ケヤキのタネが、ケヤキの樹になるように。
麦のタネが、麦になるように。 私たちのタネは、私たちになる。 八ヶ岳の遅い春がようやくやって来て、木々は生まれたての美しい新緑をまるで薄いヴェールのようにまとい始めた。 やがてその薄いヴェールは、ふくよかなドレスのような深い緑に変わる。 この時期、ほんの一瞬のあいだ、木々はヴィーナスのように艶めき、美しい。僕の庭のケヤキは、3年前に移植したもので、根切りが悪かったせいか、昨年は元気がなかった。冬のあいだ、まるで死んでしまったように枯れ果てていたその木も、しかしつい先日、美しい新緑を芽吹き、堂々と大地に生きていることを証した。 そして、八ヶ岳の大地に眠っていた麦は、新たな色彩とともに芽吹き、空に向かって穂を伸ばしている。 春がめぐり来て、そんな生まれたての新緑を見るたびに、僕はなんというか、まるでひとつの奇蹟を目にしたような驚きを感じる。 ケヤキの樹が、新たな緑を芽吹くのはあたりまえのことかも知れない。麦から落ちたタネが、麦になるのはあたりまえのことかも知れない。タネが包み込んだ遺伝子は、それが麦のものである限り、麦になるようにプログラムされているからだ。 言葉をかえれば、その遺伝子を包み込んだタネは、麦として成長することの可能性をその胎内に宿しているということだろうか。 そのタネは、ほかの何物にもなりえない。タネは、自分自身の将来像をはっきりと知っていて、迷うことなくそれを実現するのだ。 そう、迷うことなく、自分自身になるのである。 僕が驚くのは、植物たちの、その迷いのなさだ。 彼らの、ひとすじの意志だ。 植物たちの意志は強く、まっすぐである。自分自身を実現するために、その最短距離を進む。 あの柔らかで、しなやかな根は、必要ならば、アスファルトさえ砕く。 ケヤキの樹を見上げよ。そのおおらかで、誇らしげな姿を見よ。 麦の香りを嗅いでみてほしい。その艶めいて、甘やかな香りを。 心理学者のC・G・ユングは、生涯を通じて多くの人の夢を分析した。 そのなかで、子どもたちの夢分析も数多く行ない、そして、子どもの頃に見た夢が、その人の将来を予見するものであることを発見した。 つまり、子どもの頃の夢は、将来の自分自身を宿しているのである。 子どもの無意識は、やがて自分自身がどのような大人になるのかをすでに知っていて、それを夢という形で本人に知らせるのである。 いわば、子どもの無意識は、植物のタネそのものなのだ。そのタネはやがて芽吹き、葉をひらき、枝を伸ばし、花を咲かせる。 それは、あなたの樹だ。 あなたが子どもの頃に、夢に見ていたあなた自身だ。 そして、あなたの樹は、ひとすじの意志だ。それはまっすぐで、おおらかで、誇らしげだ。 柔らかで、しなやかで、強い、ひとつの意志だ。 あなたの樹は、空に向かって枝を広げている。 春の青空へ。そして、さらに遠くへ。 美しい春の、風に鳴って。 ![]()
映画『地球交響曲第6番』に共に出演したミュージシャン奈良裕之さんと、このところコラボレーションさせていただく機会が時々あり、先月4月21日は、大分市でそんな機会をいただいた。
時々、とはいっても、年に1度か2度のこと。それでも演奏を重ねるたびに、素敵な音色になっていくのがわかって楽しい。 この映像は、そんなコラボを照明家の岩井直美さんが撮影してくださったもの。 音も美しく収録されており、僕たちの二人の構図も美しい。 もしよろしかったら、どうかご覧になってくださいね。
4月29日は、京都市でライブです。カリフォルニア在住のミュージシャン、ジェニファー・ベレザンさんとの共演です。
お近くの方は、もしよろしければどうぞいらしてください。 4月29日(日) / 京都府京都市 ジェニファー・ベレザン、長屋和哉コラボレーションコンサート 時間:11:00〜15:30(開場10:30) 第1部:11:00〜12:00 長屋和哉 お昼休憩:12:00〜13:30 第2部:13:30〜15:30 ジェニファー・ベレザン 会場:東寺客殿 住所:京都市南区九条町1番地 料金:4,500円(当日5,000円)※ヘルシーな京弁当付き 出演:Jennifer Berezan、長屋和哉 定員:100名 主催:Studio KARA HP:http://studio-kara.com/ 問い合わせ・お申し込み先:http://studio-kara.com/workshop_post/9990 ![]()
3月末から、Youtubeチャンネルをスタートしました。
その最初に、2006年リリースのアルバム『イリュミナシオン冥王星』からの2曲をアップしましたが、新たに未発表の楽曲をアップしましたので、もしよろしかったら、どうかお聴きください。 長屋和哉作曲、(株)マシロ プロデュース、高岡銅器 協力による曲です。 高岡銅器の全面協力によるものだけあって、とても美しい金属の音色になりました。 4月21日、22日は、大分市と別府市でライブとワークショップがあります。お近くの方は、もしよろしければどうぞいらしてください。最近よくご一緒する奈良裕之さんとの共演です。そして、僕たちがともに出演した映画『地球交響曲第6番』の上映もあります。 4月21日(土) / 大分県大分市 映画『地球交響曲第6番』 &虚空の音Special Live 時間:13:00開演(12:00開場) :13:10 『地球交響曲第6番』上映 :15:40 虚空の音Special Live 会場:iichiko総合文化センター音の泉ホール 住所:大分市高砂町2-33 料金:前売2,500円(当日3,000円) :限定ペアチケット4,000円 出演:奈良裕之、長屋和哉 主催:おおいたガイアの会 問い合わせ・お申し込み先:097-547-8218(とよだ)
彼は、とても頭の良い犬だった。
たくさんの言葉を知っていたし、人の感情のささやかな流れを察することもできた。たまにいたずらはしたけれど、それも大した問題ではなかった。 何よりも、彼の目にはある種の知性が確かに宿っていたし、その目の輝きは彼の感情の起伏をとても素直に語りかけていた。 つまり、彼はほんとうに素敵な犬だったのだ。 彼は、黒いラブラドールだった。 美しい目を持った、とても優しい犬だった。 その彼が死んだのは、今から2年前のことだった。 数ヶ月間、衰弱によってもはや体を起こすことができなくなり、そして最期は静かに息を引き取った。それは明け方のことだった。「レオンが死んだ」と妻が言った。僕たちは、死んだ犬をたくさんの花で包み、午後になってから、庭に彼を埋めた。墓標はまだなかったから、とりあえず素敵なレンガを敷きつめて、それをたくさんのキャンドルで飾った。 いつもと同じ、静かな夜だった。 あれから2年が経った。 そして、つい昨日のこと。 僕は、彼がすぐそばにいることに気がついた。 ![]() 霊感、という言葉はあまり好きではないが、こういうものを僕自身が持ち合わせていると思ったことは、そんなになかった。しかし知人の家で、いないはずの猫が僕の足元を歩いていくのを感じて、ちょっと悪いかなとは思いながらも、そのことを知人に告げると、飼っていた猫がつい死んだばかりだと彼女は言った。猫の柄まではわからなかったが、それは確かに猫だったし、生きている猫そのものだった。 そんなことは、これまでに何度か経験したことがあった。まあ、とりたてて言うほどのことでもないし、僕もすぐに忘れてしまうので、すべては過ぎ去ってしまう。 昨日のこと。 朝から降り続いたちょっとした嵐のような雨は、夕方になってようやく止んだ。しかし、冷たい風は吹き続けていた。僕は、家のデッキに出て、一人掛けのソファに腰掛け、コーヒーを飲んだ。肌寒かったが、夕方の陽射しは眩しくて心地よかった。 そしてその時、ふいに、ほんとうに何の前触れもなく、僕の目の前に、その犬の気配がふっと現われた。 いや、それは気配と呼ぶにはあまりにも濃密だった。彼は、僕のすぐ目の前にいて、僕の顔を見つめていた。あの懐かしい目で、僕のことをじっと凝視していた。尻尾が少し揺れていた。 僕は驚いたが、すぐに気を取り直して、彼を見つめ返した。ソファに腰かけた僕の膝あたりに、彼の体が触れているような感じがあった。彼の顔は、その膝の少し上あたりにあって、まだ僕を見つめていた。 ああ、僕は思った、レオン。 レオン、おまえ、久しぶりじゃないか。 僕は彼の頭を撫でようと思い、コーヒーをデッキに置いて、腕を伸ばした。そして、僕の手は、宙を撫でた。何もない空間で、僕の手は彼に触れていた。 こんなことを書くと、もしかしたら僕は頭のネジが飛んでしまっていると思われるかも知れないが、しかし、僕はその時そうしないではいられなかったのだ。僕は、彼に触れたかったのだ。そして、宙をさまよう僕の手は、それでも彼に触れることができたような気がした。 レオン、僕は彼に呼びかけた。レオン。 そうして宙に手を伸ばしながら、ふと僕は、彼は死んでからもずっといつも一緒にいたのだということに気がついた。ただ、そのことに僕自身が気がついていないだけだったのだ。日常のこと、仕事のこと、そして家にまだいる他の犬たちや猫のことなどにばかり注意を向けていて、それ以外のことに意識が向かなかったのだ。 ああ、レオン。僕は思った。ごめんよ。おまえがそこにいることに、これまでちっとも気がつかなかったよ。おまえはこうしてずっと一緒にいてくれていたのに、僕は他のことにばかりかまけていたんだ。おまえはそこでずっと尻尾を振ってくれていたのに、僕にはおまえの尻尾を感じることはできなかったんだ。頭を撫でてやることもしなかったし、呼びかけることもしなかった。レオン。ごめんよ。おまえは優しい犬だね。ずっと僕たちと一緒にいてくれたんだね。 僕はそう思い、胸が熱くなった。彼の気配は、消えないまま、そこにあった。 思えば、彼が立ち上がれなくなってしまった数ヶ月間、僕たち夫婦はよく泣いていた。しかし、犬の前で泣くと、犬が不安になるので、おたがい泣く時は別の部屋に駆け込んだ。あれほど泣いたのに、彼が死んだ時は、もう涙は出なかった。その数ヶ月間で、僕たちはいつの間にか彼の死への準備を済ませていたのだった。 彼が死んだ明け方の前夜、僕たちは友人夫婦を招いて、家でパーティをした。僕たちはさんざん笑い、飲み、騒いだ。その僕たちの笑い声が、彼がこの世界で耳にした最期の音だった。少なくとも、彼は僕たちの幸福を聴いてくれたのだ。その幸福な笑い声に包まれて、彼は安らかに最期を迎えてくれただろうか。 しかし、彼はそれからも、片時も僕たちから離れたことなどなかったのだ。 彼はずっとそばにいてくれたのだ。あれから、ずっと。昨日も、そして今日も。 おまえは、ほんとうに優しい犬。すてきな犬。ずっと一緒だったんだね。ごめんよ。 レオン。 ![]()
昨年の3月11日からちょうど1年を迎えた。
Facebookをはじめ、たくさんのブログなどで多くの方がそのことについて書かれているので、僕としては新たに書き加えることは何もないだろうと思っていた。 昨夜(11日)の夜までは、ずっとそう思っていたのだ。 しかし、夜になってある女性からメールをいただき、それを読ませていただいて、僕はひとつ、大きなことを見落としていたことに気がついたのである。 だから、それについて、やはり書いておこうと思ったのだ。 これは半ば、僕自身のために。そして、その女性と、その女性と同じような心境でいるかも知れない見知らぬ方のために。 ![]() その女性は、原発事故の後、放射能の影響から逃れるために、海外へ移住した。 彼女には幼い子どもたちがいたため、その移住は言うまでもなく理知的な判断だった。 それから約1年、海外での生活に慣れるのはきっと大変なことだったに違いない。だが、それよりも何よりも、彼女の心は震災のことでずっといっぱいだった。片時も忘れたことはなかった。 彼女は、自分がそこから「逃げてきた」ことに対する大きな罪悪感をずっと抱き続けてきたのだ。そうして彼女は、震災から1年を迎え、その罪悪感を抱えたまま、自分がこの先どうやって生きてゆけばいいのか、それすらわからなくなってしまったのだった。 震災直後、僕はこの大地で生きていくことの覚悟のようなものをブログに書いたことがある。 http://rhyme.exblog.jp/12300117/ 僕はここで生きていこうと決めたけれど、今から思えば、ここから避難をしようとする人たちのことをまったく考えようともしなかった。 だが、避難を決意し、海外などへ移住された方々も、この女性と同じようにやはり心に深い傷を負ったのだと、僕はようやく気がついたのだ。 実際に被災された方々の傷は、僕などには到底想像だにできないほど深いものであるに違いない。しかし一方で、そこから「逃げてしまった」と考えている方々も、やはり心に傷を負ったのだ。 結局のところ、その人の行為がどうであったにしろ、あの震災は多くの人々の心を傷つけたのである。もう一度書くが、実際に被災された方々の痛苦を僕などが計り知ることはできない。しかし、そうでない人にとってすら、そこから「うまく逃げおおせた」人なんて、本当にいたのだろうかと思う。 「逃げてしまった」と思う罪悪感。 被災された方々のために何かできたかも知れないはずだったのに、自分と家族のことを想い、「逃げてしまった」。 「私は、これからどうすればいいですか?」 とその女性はメールで問いかけてきた。 僕は自分の至らなさを思い、移住された方が背負ってしまったものの重たさを思った。 どうお返事を書いたものか、僕は3月11日の夜、ずっと思いめぐらせていた。そして、12日になってようやく書くことができた。たどたどしい文章ではあるが、彼女の心の傷を想って書いたものであり、そして、まだ見ぬ人の心の傷を想って書いたものだ。 しかし、もしかしたら、僕はひどくつまらないことを書いてしまったかも知れない。それによって、ひどく混乱させてしまったかも知れない。ただ、嘘を書くことだけはしまいと思ったのだ。本当のことを書き、そして、それが結果的に彼女の心の荷を多少なりとも軽くすることができたら、それはそれで素晴らしいことだと思ったのである。 この文章は、「逃げてしまった」という罪悪感に苛まれて、圧し潰されてしまいそうな、見知らぬ方への僕からの手紙でもある。もしよかったら、どうかお読みください。 ・・・さんへ 「さて、あなたは『私は逃げてきてしまった』と書かれているけれど、それはまったく当然の選択だったと思います。僕も原発の爆発の直後は真剣に考えました。あなたは『私はこれからどうすればいいですか?』と言うけれど、あなたが海外にいて、それでもできることはちゃんとあります。 直接、震災の被害に遭われた方のことは、僕たちのように被害に遭っていない人間には結局は計り知れません。そして、彼らのために多くの方々がボランティアなどの形で復興支援を通じて、サポートしてきました。あるいは援助金という形で。それは本当に、素晴らしい行為であることに間違いありませんね。 しかし一方で、あなたも、自分を犠牲にしたではありませんか。 自分の大地を離れること、それから郷里を離れる決断をしたことによって。 それは大きな喪失だったことでしょう。たくさんの人が今回の震災で喪失を経験しましたが、あなたの経験したことだって、ひとつの大きな喪失だったんですよ。 自分の大地と郷里を失うこと、もうそれで充分ではないですか。 しかし考えてみれば、望もうが望むまいが、結局のところ人間は失い続けるものなのかも知れません。生きていくと、たくさんのものを失いますよね。 ただ、それでも生きていこうと思う時、その手がかりは、自分の身近な者たちもやはり同じように失い続けているのだということに対する、切実な愛情です。誰もが死へ向かっていることへの愛情です。 喪失と死は、あなたが歩いている大地のすぐ下に存在しています。 そしてあなたの一歩一歩、その足裏がそれを確かに感じている時、あなたの隣を歩いているあなたの愛する者も、やっぱり同じようにそれを感じとっているのです。いや、むしろ、愛する者の一歩一歩が、痛みのように、あなたを静かな愛情へ駆り立てるのです。 しかし愛情は、残念ながら、死にも喪失にも勝てる手だてを持っていません。それはただ見守るのみです。しかし、それでも、あなたにはそれしかないのです。僕たちが生きていく拠り所は、ただそれだけです。 ただ、その愛情が自分と他者とをはかなくも確かに繋ぐ時、人生には『それでも生きていく』という切実な果実があります。 ほんの一瞬で数えきれないほど多くの方々が失われてしまうこの無情の世界で、しかし、それでも生きていくのです。 いいですか、『それでも』生きていくんですよ。何があろうとも。 あなたが愛する者の一歩一歩の足音に寄り添い、そして、いずれ訪れる死があなたたちを分かつまで。」 長屋和哉 ![]() アルバム情報を、ご覧ください。 http://www.ame-ambient.com/silent.html
先週末、9年ぶりに那覇へ行った。
9年という歳月が果たしてどれほどの時間の堆積なのか、僕にはよくわからないが、それでも久しぶりに見、感じた那覇の街は驚くほど変貌していた。 9年前、街はいかにも南国らしくのんびりとしていたが、建て込んだビルやマンションや商業施設はまるで本土の地方都市のようでもあった。ひとつの街が、たった9年でこれほど変わるものなのか、と目を疑わずにはいられなかった。 それぞれの地域には、それぞれの音風景がある。しかし、街という存在は、それぞれだったはずの音風景を見事に均質化してしまう。首里にあるお寺で、音のワークショップをやりながら、僕はずっと「那覇の音風景」ということについて考えていた。 果たして「那覇の音風景」とは何だろう。 僕はお寺の堂内に聞こえてくる街の騒音に耳を傾けながら、この街の騒音の背景に広がっているはずの海の音に思いを寄せる。沖縄の人たちが、生まれてからずっと、片時も休むことなく聴き続けてきたはずの、その海の音。 その音は、沖縄の人たちの無意識に刻み込まれ、彼らの精神の輪郭を象ってきたのではなかったか。 海の音。 絶えることのない潮騒と、海鳴り。 生暖かい海風に愛撫されてざわざわと音を立てる木々。その愉楽。 葉裏を見せてなまめく木たちよ。 白い道と、ゆるやかな丘たちよ。 そして、柔和に微笑む人たちよ。 静かな、生命の時間よ。 どうか忘れないでいてほしい。僕はワークショップをしながら、本当はそう言いたかったのだ。 あなたたちを、その生命の端緒からずっと包み込んできたその音を。 あなたたちのかけがえのない美しい精神を育ててきたその音を。 絶えることなく、ずっとあなたたちと一緒にいたその音を。 僕は本当にそう言いたかったのだ。余計なお世話かも知れないから、言わなかったけれど。 ![]() さて、今週末は、愛知県豊山町でコンサートがあります。 今回のコンサートにはトークの時間もあります。『大地と神話』というタイトルで、お話する予定です。 もしよろしければ、お近くの方はぜひいらしてください。 3月4日(日) 長屋和哉トーク&ライブ『大地と神話』 時間:13:30開演 会場:豊山町社会教育センターホール 住所:豊山町大字豊場字和合72 料金:500円(全自由席) 出演:長屋和哉 予約・問い合わせ:0568-28-3739(白倉栄子まで) 主催:とよやま女性の会 アルバム情報もどうぞご覧ください。 http://www.ame-ambient.com/silent.html ![]()
ライブ情報を更新しました。
http://www.ame-ambient.com/live.html 今月2月は沖縄、3月は愛知県と茨城県、4月は大分県と京都府でライブがあります。お近くの方は、もしよろしかったらぜひいらしてくださいませ。 沖縄では那覇市でのワークショップと、シンギングボウルでのライブです。普段、ライブで使っているゴングやダルシマーなどは使用せず、シンギングボウルやおりんなどを中心に、とても静かなライブにしたいと思っています。 自分自身の内奥へ耳を傾けるように、じっと耳を澄ますことができるようなライブです。 ![]() なお、このライブは沖縄で活動を開始した被災者支援団体、SARAによって主催されます。 言うまでもなく、東日本大震災によって事故を起こした福島第一原発による放射能汚染の脅威に晒されていらっしゃる方々への支援です。 原発事故が発生し時間が経過するにしたがって、政府や東電の発表が個人のブログや任意団体などの情報と激しく矛盾するようになり、事故からこうしてほぼ1年が経った今、果たしてどれほどの人たちが政府の発表をそのまま信じているでしょうか。 放射能汚染の程度は、健康に問題のあるレベルではない、と言いながら、しかし現実には市民たちによってのみ、プルトニウムやストロンチウムなどの首都圏への飛散が確認されているのが現実です。もう一度書くと、「市民たちによって」なされているのです。政府が率先して、こうした事実を発表したことがこれまで果たしてあったでしょうか。 以下は、SARAの活動趣旨である。どうかお読みください。 *************** 被災者支援 SARA(皿=受け皿に徹します) 活動趣旨 移動、移住を支援します。 高濃度の放射能に取り囲まれている、福島の人たちと東日本全体の、子どもと大人すべての人の短期移動、移住を応援します。 保養する人たちの移動、移住場所・沖縄。発案人がそのために現在沖縄移住しています。沖縄本島の北部やんばる在住。海、緑、環境抜群のため。期間 今すぐから春休以前でも以降でもお受けします。 移動される方の支援対象となる場所は、今回の震災で被害を受けた東日本。 被害を受けた方と放射能の不安を抱えたかたでしたらどこからでも受け入れます。 特に、子どもたち、乳幼児を抱えたお母さんたちと、妊娠中の方たちもぜひご参加ください。 宿泊先などは、現地で奔走し、少しでもご負担を軽くできるよう努力してまいりました。 これが今私たちができるもっもと大きなことです。 実行委員 板垣真理子(写真家・文筆家)ピーター・バラカン(ブロードキャスター)山崎明美(元気印)堀尾藍(アフリカ研究)hanchan(歌手)本竹功治(設計事務所)小林由莉香(設計事務所)青島左門(美術家)三浦雅人(団体職員)高橋泰子(コーディネーター) 賛同人・協力者 大林稔 (龍谷大学経済学部教授アフリカ研究)梅津和時(サキソフォニスト)金子飛鳥(バイオリニスト「本・つながる ・未来」プロジェクト)UA (歌手、沖縄てぃだのわ主催)早坂紗知 (サキソフォニスト、minga)伊藤志宏(ピアニスト)松田美緒(歌手)片岡俊也(農業・沖縄)森岡尚子(農業。沖縄)森岡浩二(農業・沖縄)種村大樹(琉球大学) ****************
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